レフトビハインド

 レフトビハインドは「取り残された」という意味です。元牧師のラヘイさんが聖書に基づいた原案を書き、作家のジェンキンズさんが一級のエンターテインメント小説に仕上げました。全12巻です。
 
 聖書には、イエス・キリストがいつの日か、もう一度この地上にやって来る(「再臨」と言います)と書かれています。再臨に伴い、真にイエスを受け入れた者だけが空中に引き上げられる「携挙」が起き、その後、残された人たち(=レフトビハインドされた人たち)が地上で7年間の「大患難(かんなん)時代」を迎えることも書かれています。
 
 ただし、この点についてはキリスト教界内でも解釈が分かれていますので、すべてのクリスチャンが再臨、携挙等を信じているわけではありません。そもそも日本の教会の多くはなぜか再臨や携挙については、ほとんど語りませんね。
 
 前振りが長くなりましたが、「レフトビハインド」シリーズは近未来に起こるそのような出来事を描いた小説です。携挙により世界中で人々が忽然と消え、聖書で預言された通りにさまざまな災厄が地上を襲い、携挙後にイエスを信じた者には次々と迫害が押し寄せ、それがクライマックスに達した時にイエスが地上に再臨する……というストーリーです。
 
 10年以上前、クリスチャンの義父が第1巻を贈ってくれたのですが、私は読んで背筋が冷たくなりました。「私みたいな生ぬるいうわべだけのクリスチャンは、携挙されないに決まっている」。携挙に漏れないようにしようと、心を入れ替えました(一度イエスをメシアとして受け入れた以上、救いを失うということはあり得ないのですが、当時は教理に対する理解が甘かったので、本心でそう思ったのです)。
 
 長男は「殿堂」の中で本書が一番のお気に入りのようで、2回読破しました。その昔「ER 救急救命室」という米国の優れたテレビドラマがありましたが、あれのキリスト教版と言えなくもありません。さまざまな人物が登場し、恋が生まれ、引き裂かれ、ある人物は亡くなり、それに代わる魅力的な新キャラが登場し……という点で。そういう意味で作りが上手ですし、ノンクリスチャンであっても、間違いなく読み応えのある作品です。第11巻「ハルマゲドン」、第12巻「グロリアス・アピアリング」は、読んでいる間じゅう脳内がしびれますよ。
 
 本書を原作にした同名の映画が2013年に公開されました。第1巻の半分ぐらいまでを、比較的忠実に映画化しています。悪くはなかったですが、これをキリスト教や携挙・再臨を学んでもらうためのツールとして使えるかと言えば、ちょっと弱いですね。
 

(ティム・ラヘイ、ジェリー・ジェンキンズ、いのちのことば社フォレストブック)