松山ケイリン(その2)

八つの契約

 では手元に、こちらのチャートを用意してください。色はモッテル・チャートに合わせてあります。
 
 代表的なところだけを説明します。赤枠で囲ったところです。
 
 八つの契約には
 ①条件付き契約(もしあなたが~するなら。期限付き)
 ②無条件契約(わたしは~する。無期限)
 --があります。
 
 八つの契約は
 -1:エデン契約
 -2:アダム契約
 -3:ノア契約
 -4:アブラハム契約
 -5:モーセ契約
 -6:土地の契約
 -7:ダビデ契約
 -8:新しい契約
 
 --で、いずれの契約も、神と人類の代表としてのアダムやイスラエルの民の間で結ばれたものです。新しい契約は、われわれ異邦人も広い意味で適用対象です。
 
 先ほど日本史を例に取りましたが、統治のあり方とルールは一体のものです。契約が重要なのは、基本的に契約の始点が一つの時代の始点となるからです。
 
 この中で最も大事なのは、アブラハム契約です。アブラハム契約は聖書を、歴史を貫く背骨のようなものです。創世記を開きましょう。
 
 まず12:1~3。

 【主】はアブラムに言われた。「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい。
 
 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい。
 
 わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう。地のすべての部族は、あなたによって祝福される」

 ここからは、
 ①神はアブラハムの子孫から大いなる国民を誕生させる
 ②地のすべての部族は、アブラハム(とその子孫)によって祝福される/呪われる
 
 ことが分かります。①が子孫の条項、②が祝福条項と呼ばれます。
 
 ①についてはヤコブの12人の息子とその子孫という形でまず成就しました。「大いなる国民」はさまざまな解釈が可能ですが、メシアの家系に連なるという意味に私は理解しています。マタイの福音書は「新約聖書の扇の要」と言われますが、その書き出しは何ですか?
 
 ②の祝福条項とその裏返しである呪いについて解説します。呪いの方は分かりやすいですね。イスラエルの民を迫害した古代エジプトに何が起きましたか? エステル記はどんな話ですか?
 
 考えてほしいのは、ここから先です。イスラエルの民は紀元70年、ローマ帝国に国を滅ぼされ、世界各地に離散しました。どこでも「キリスト殺しの民」と迫害を受け続けました。
 
 歴史上、国を失ったさまざまな民族が消滅していったのに、ポグロムやホロコーストに遭ってもなお、ユダヤ人は存続し続けている。なぜですか? 神がアブラハム契約に沿って民を守られたからです。一方、帝政ロシアもナチスも、弾圧した側が滅んだ。「呪い」の結果です。
 
 中世スペインや近代イギリスはユダヤ人に寛大な政策を取りました。それらの国が海洋国家から世界帝国となったのは周知の事実です。戦後最も繁栄した国はアメリカと日本です。日本は第二次世界大戦中、ヨーロッパからのユダヤ難民の通過を認めました。彼らは主に東欧からウラジオストック経由で敦賀に到着し、神戸を経てアメリカに逃れました。アメリカは彼らにとっての逃れの地でした。「祝福」の結果です。
 
 次に13:14~17を開きましょう。

 ロトがアブラムから別れて行った後、【主】はアブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいるその場所から北、南、東、西を見渡しなさい。
 
 わたしは、あなたが見渡しているこの地をすべて、あなたに、そしてあなたの子孫に永久に与えるからだ。
 
 わたしは、あなたの子孫を地のちりのように増やす。もし人が、地のちりを数えることができるなら、あなたの子孫も数えることができる。
 
 立って、この地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに与えるのだから」

 ここからは、③アブラハムに、そしてその子孫に、約束の土地をすべて与えることも分かります。これが③土地条項です。
 
 土地条項は出エジプト後にヨシュアの代で一度実現します。紀元70年に完全に国土を失った訳ですが、1948年の国家再建によって取り戻します。土地条項の部分的な成就です。4度にわたる中東戦争でもこの土地は失われませんでした。所有権がイスラエルに属するからです。約束の地の完全な回復は、イエスの再臨後、「御国の時代」になります。
 
 こうして見ると、アブラハム契約が聖書時代、離散時代、国家再建後、そして未来まで、ずっと効力を維持していることが分かりますね。

七つの時代区分

 では、次に時代区分の方を見ていきましょう。時代は
 
 -1:無垢の時代
 -2:良心の時代
 -3:人間による統治の時代
 -4:約束の時代
 -5:律法の時代
 -6:恵みの時代
 -7:御国の時代
 
 --の七つに区分できます。
 
 聖書を読み込むと、各時代には①テスト②失敗③裁き--という流れがあることが分かります。失敗=罪がピークに達すると、裁きと共に次の時代に移行します。
 
 使徒の働き2章で聖霊なる神が降臨して以降、歴史は「恵みの時代」に入りました。この時代のテストは「イエスをメシアとして、神からの恵みとして受け入れるか」。たったそれだけです。これは言い換えれば「神は救いのハードルを非常に低く設定してくださった」ということです。年齢、学歴、人種、性別、居住地等、一切不問。ユダヤ人も異邦人も、同じように招かれている。
 
 にもかかわらず、多くの人がこのハードルを飛び越えられないでいます。多くの人が神に背を向けて、自分自身の偶像に仕えています。残念ですが、今後も罪と混乱は深まるばかりでしょう。
 
 罪に対する裁きが、7年間の「大患難時代」です。1948年のイスラエル建国によって最後のピースが埋まったので、あとは時間の問題。救いに予定されている異邦人の数が定員に達し次第、突入です。われわれクリスチャンは、その直前に携挙されます。
 
 詳細は端折りますが、大患難時代のクライマックスでユダヤ人が民族的に悔い改め、イエスをメシアとして受け入れる日が来ます。その時、メシアは信徒と共に再臨され、そこから1000年間の「御国の時代」が始まります。
 
 ここでもう一度、黙示録20章4~6節を開きましょう。

 また私は多くの座を見た。それらの上に座っている者たちがいて、彼らにはさばきを行う権威が与えられた。また私は、イエスの証しと神のことばのゆえに首をはねられた人々のたましいを見た。彼らは獣もその像も拝まず、額にも手にも獣の刻印を受けていなかった。彼らは生き返って、キリストとともに千年の間、王として治めた。
 
 残りの死者は、千年が終わるまでは生き返らなかった。これが第一の復活である。
 
 この第一の復活にあずかる者は幸いな者、聖なる者である。この人々に対して、第二の死は何の力も持っていない。彼らは神とキリストの祭司となり、キリストとともに千年の間、王として治める。

 イエスと共に再臨した信者、大患難時代に殉教した人は、復活して栄光の体を与えられ、メシアと共に1000年間、世界を統治します。「王」というのは、メシアを頂点とする統治機構の官僚だと考えればよいでしょう。どの程度の領土と権限を任されるのかを決めるのが、信者を対象とした「第一のさばき」です。さばきと言うと悪いことをしたかのように思いますが、これは信仰者生活に対する報奨を判定する場です。
 
 1000年の統治が終わった時、不信者に対する「第二のさばき」が行われます。こちらは文字通りの裁きです。第二の死とは、不信者の霊魂が永遠の火の池に投げ込まれることを意味します。おーこわ。
 
 こうして地上から罪が一掃された後、黙示録21章の新天新地の時代に入り、信者はそこで神と永遠を過ごすことになります。