もう少し学びたい方のために
「ディスペンセーション」という単語をどう訳し、理解するか。
その1:語源はギリシャ語「オイコノミア」です。「家」を意味するオイコス+「管理」を意味するノモスが合わさったものです。
「オイコノモス」はルカ12:42と16:1、3、8▽ローマ16:23▽Ⅰコリント4:1、2▽ガラテヤ4:2▽テトス1:7▽Ⅰペテロ4:10--で使われています。
「オイコノミア」はルカ16:2~4▽Ⅰコリント9:17▽エペソ1:10と3:2、9▽コロサイ1:25▽Ⅰテモテ1:4--で使われています。
聖書がローマ帝国の公用語であるラテン語に訳された時(ウルガタ=共通=訳とも言う)「ディスペンサシオ」という語が当てられました。これが英「ディスペンセーション」の直接的な語源。欽定訳聖書で検索すれば、ディスペンセーションという語がⅠコリント9:17▽エペソ1:10と3:2▽コロサイ1:25--でヒットします。
辞書でディスペンセーションを引くと、「施すこと、分配、施し物、天の配剤、(神の)摂理、統治、制度、体制」と説明されています。ATMが普及する以前「キャッシュディスペンサー(CD)」という似たような機械がありましたが、あれは「お金の分配機」ぐらいの意味でしょう。ここで覚えておいてほしいのは、「統治」という語です。
その2:オイコノミアは英「エコノミー」の語源でもあります。江戸時代まで外国語=漢文=中国語でしたが、明治以降、西欧の言葉が一気に入ってきた際、日本の知識人たちは、西欧の言葉をいったん漢語に置き換えたうえで、日本語に取り入れました。
エコノミーは、今でこそ「経済」、つまりお金や企業活動に関係した言葉として理解されていますが、元の漢語は「経世済民」。世をおさめ(=経営し)民をすくう(=救済する)、という意味です。
経は「縦の糸」の意。縦の糸はあなた……ではなく、組織統治に関係しているので「経営」という語があります。天の教えに関係しているので「経典」という語があります。
「経世済民」は経済を含めた国家の政治、統治全体を意味します。ここでも「統治」が出てきましたね。
その3:ではディスペンセーションを経済、経営と訳せばよいかというと、今の日本ではいずれもお金や企業活動に関係された語として理解されているので、適当でありません。適当な日本語を当てるなら「経綸」です(文語訳聖書では実際に使われている)。ただし古語・死語に近い。
「経」の意味は先程説明しましたが、綸は「太い糸」の意で、(中国の)天子様に関係した言葉です。「綸言汗の如し」とは、「天子の口から出るときは糸のように細い言葉が、下に達するときは組み糸のように太くなって取り消せない」という意味です。
明治天皇の「五箇条の御誓文」には「上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし」とあります。ここでは「経済活動を含めた国家の運営、統治」という意味で使われています。司馬遼太郎は「坂の上の雲」で小村寿太郎をこう評価しています。「一国の外交は天才的な経綸家のみが為しうる仕事だが、明治の日本はその種の人才を持つことで多少の幸運を得た」
その4:つらつらと書き述べてきましたが、ギリシャ語でも英語でも中国語でも日本語でも、底流で共通するのは、これらが家というか組織の管理や統治に関係した語である、ということです。
誰による統治か? 三位一体なる神による、家=この世界、歴史すべての統治です。神の人類救済計画に関係していることは言うまでもありません。
以上を総合したうえで、「ディスペンセーション」をあえて意味づけるなら、「創世記から黙示録まで通された、神の七色の一本の糸」になります。