愛媛に住んでいたころ、あるお寺のお坊さんと親しく話す機会を得ました。信仰の対象は異なれど、信仰者同士響き合うものがあった……と私の方は思っています。
お坊さんに「キリスト教の歴史は分裂の歴史です」と言うと、彼は「仏教も同じです」と教えてくれました。
キリスト教はもともと、ユダヤ教の一派でした(そもそもイエスも弟子たちもユダヤ人です)。当時は「ユダヤ教ナザレ派(ナザレはイエスが育った場所)」と呼ばれたようです。そこから数えて、ざっくり2000年の歴史があります。
成立から1000年後、まず東西に分裂しました。東が「正教(ロシア正教、ギリシャ正教など)」、西が「ローマカトリック」です。
それから500年後に、カトリックからプロテスタントが生まれました。プロテスタントは現在、大きく三つのグループに分かれます。①自由主義神学派(エキュメニカル、メインラインともいう)②福音派③聖霊派(ペンテコステ派やカリスマ派)--です。三つのグループの中で、さらにうんたら教団とか、かんたら同盟とか、それはもう無数にあります。
信じている神は同じなのですが、神や、聖書をどう解釈・理解するか、あるいは教会の運営方法を巡って「自分たちの考え方/やり方が正しい」と互いに主張した結果、こうなっています。神の視点では、このような歴史を通して、キリスト教界内に多様性を生み出した、となるのかもしれません。
最上位に来るのは知性か信仰か
私はプロテスタントなので、①~③の違いだけ、簡単に説明しておきます。
大雑把に言って「聖書は一字一句誤りなき神の言葉であるか?」という質問にNOと答えるのが①、YESと答えるのが②と③です。
①の自由主義神学派の人たちには、ノアの箱舟と大洪水はただの伝説、マリアの処女懐胎は一種の比喩です。書店でキリスト教の解説書を探すとみつかるのが、佐藤優さんや橋爪大三郎さんの著作ですが、いずれもこの立場です。②③の人たちには大洪水も処女懐胎も「本当にあった話」です。
「聖霊による数々の奇跡は現在も起こりうるか?」に、基本的にNOと答えるのが②の福音派、YESと答えるのが③の聖霊派です。
③の教会に行くと、「聖霊による奇跡的な病の癒し」を求めたり、異言で祈ることなどが、結構当たり前にあります。②の教会でそのことを話すと、ドン引きされたり眉をひそめられるので、注意が必要です。新しく教会を選ぶ際は、その教会がどんな立ち位置であるかを確認するのが良いと思います。
プロテスタント内のメディア・出版社をざっくりまとめてしまうと、自由主義神学の人たち御用達なのがキリスト新聞、教文館や新教出版社。福音派の人が支持するのがクリスチャン新聞、いのちのことば社。聖霊派が愛読するのが(今はなき)リバイバル新聞、マルコーシュ・パブリケーションや生ける水の川(社名です)など。
正教を除いた、カトリックとプロテスタントの歴史については「eBible Japan 聖書研究総合サイト」がいい具合にまとめてくれています。
私自身は軸足は福音派に置いています。でも、聖霊派に対しても極めてオープンです。どっちにも、良い所と至らぬ所があるんですよね。
トランプ大統領誕生後、ニュースや解説番組などが「その支持母体であるキリスト教福音派」に言及することが多くなりましたが、分かりやすく言えば「聖書を書いてある通りに(字義通りに)受け止めて信仰しているクリスチャンたち」ということです。もっとも、私は福音派を自認していますが、トランプ支持者ではありません(笑)。