受肉、だと思うんですよ。
受肉というのは神学用語なんですが、神である(=天におられる、目に見えない、霊である、「ことば」なる、形のない)御方が、2000年前にこの地上で人間イエスになられたことを言います。人類史における最大の奇跡・神秘です。
私はプロテスタント福音派を自認していますが、福音派とは「聖書を書かれている通りに信じる」人です。「原理主義」と言われたりもしますが、聖書を最高の権威とし、聖書に書かれていることを人生の中で体現していこうとする様、みことばを受肉させようとする姿は、私はとても価値のある、美しい生き方だと考えています。
オパとオマ
2023年11月4日、カナダ・ブランプトンのブラマレア・バプテスト教会で、一人の女性信者の告別式が営まれました。その模様がYouTubeにアップされたので、私と妻も偲びながら見ました(すごい時代ですね)。
彼女の名前はウィルマ・デボアさん=写真右から2人目。オランダ系カナダ人で、夫のカールさん(本稿執筆時点はご健在です)=写真右端=共々、宣教師として来日しました。日本での福音宣教は、33年に及びました。私たち夫婦は、そのうちの数年を、長崎県の片隅にある小さな教会で共にしました。
カールさんは陽気で社交的。ウィルマさんは物静かで、編み物などをしながら、いつも皆の会話にじっと耳を傾けていました。
でも、いるんですよね。言葉で自己主張しなくても、存在感だけで雄弁に語る人が。ウィルマさんは、まさにそういう「品性の人」でした。
私たちは、カールさんをオランダ語でおじいちゃんを意味する「オパ」、ウィルマさんを「オマ」と呼んでいました。自宅に食事に招いてもらったり、夜遅くまでいろいろなことを語ったり、聞いたり、祈ったり。そうした記憶の数々は、私たちの一生ものの財産です。結婚したてで危なっかしいところのあった私たち夫婦にとっては、よきロールモデルであり、よき導き手でした。
みことばの受肉
私は英語力に乏しいので、告別式で語られていることは何となくしか分からなかったのですが、それでも聖書から「箴言」31章10節からと「ガラテヤ人への手紙」5章22節からが引用され、「彼女はまさにそのような人であった」と言っていることは伝わりました。
ウィルマさんは、まさに「聖書の言葉が人生の中に受肉した」、福音派の鑑のような人でした。だからこそ、多くの人が彼女の死を心から悼みました。
人生で最もアクティブな時期を日本のために捧げてくれたウィルマさんに、私は感謝の言葉しかありません。地上でのお別れはとても残念ですが、天国での再会まで、私もまた、みことばを人生の中で受肉させる歩みを続けたいと思います。