パプリカがハレルヤしたら

 わが家の子供たちは、米津玄師さんの歌をよく聞いています。傍らで聞くとはなしに聞くうちに、世間の流行に疎い私も何となく覚えてしまいました。「打上花火」と「Lemon」ぐらいですが。
 
 その米津さんが、NHK2020応援ソングプロジェクトとやらで作詞・作曲・プロデュースした曲が「パプリカ」です。
 
 私の第一印象は「ん?」でした。
 
 サビの歌詞に「ハレルヤ」とあったからです。
 
 日本語の「晴れる」や、助詞の「~や」に通じるからでしょうが、パプリカに限らず、歌詞に「ハレルヤ」が使われる事は、日本の歌謡曲ではしばしばあります(ゆず「雨のちハレルヤ」など)。
 
 パプリカを聞いた時、私の脳内では、カナダ在住の仮想ユダヤ人ペテロ・シモンさんがこのように言いました。
 
 「わーお、日本はユダヤ教国でもキリスト教国でもないのに、日本人はセキュラーの曲で『ハレルヤ』を連呼してマース。不思議な民族ですネー」
 
 ハレルヤは、ヘブライ語です。ハレルとヤに分かれます。
 
 ウは宇宙船のウ(ああブラッドベリ)、ヤは山崎のヤ……ではなくヤハウエのヤです。ヤハウエは聖書の神で、ユダヤ教徒、キリスト教徒が信じる神の名です。新改訳聖書では【主】とカッコつきで表記されています。
 
 ハレルは「たたえよ」という意味。ですからハレルヤで「【主】をたたえよ」という意味になります。何か素晴らしいことがあったとき、その背後にいる神の栄光をたたえて、クリスチャンは「ハレルヤ」と言いいます。賛美歌にも頻繁に登場しますし、祈りの中でも日常的に使います。
 
 余談ですが、聖書の登場人物には、「ヤ」がつく人が多いです。イザヤ、エレミヤ、エリヤ、アナニヤ等々。むろんこのヤもヤハウエのヤで、「【主】はうんたらなり」という意味になります。
 
 世界の注目を集めること必至の東京五輪に合わせて作られた曲でしょう。最近は、日本の歌も簡単に海外で聴けますし、ましてや売れっ子歌手・米津さんの曲、ましてや天下のNHK。世界中のユダヤ人やクリスチャンが聴いて、先のシモン・ペテロさんのように誤解する人が出なければいいけど……と、私は心配したのです。それが「ん?」の理由です。
 
 そしたらあなた、英語版までプロデュースされるというじゃありませんか。完全に海外展開を考えていますね。
 
 先日、英語版を聴く機会があったので、歌詞に注目しました。日本語版だと、サビの1回目が「パプリカ、うんたらかんたら」で、2回目が「ハレルヤ、うんたらかんたら」なのですが、英語版では、ペテロさんの事を意識した訳ではないでしょうが、2回とも「パプリカ」になっていました。
 
 あーよかった。