歴史的な接点がほとんどなかったので日本ではあまり意識されせんが、欧米の底流には「反ユダヤ主義」があります。相手がユダヤ人だからという理由で嫌悪し、偏見や敵意を持つことです。それが社会的集団レベルで発露すると迫害になります。その最たるものがナチス・ドイツによるホロコースト(全焼の生贄という意味です)。第二次世界大戦が終わって70年以上が経過した今もユダヤ人を対象としたテロは絶えることがありません。
反ユダヤの対義語は親ユダヤです。私は親ユダヤです。ユダヤ人の民族的な悔い改めのない限り、イエスの再臨はないという立場だからです(ゼカリヤ書12章10節など参照)。
そういう訳で私の読書や映画鑑賞も、そちらに偏ることになります。今回は、「映画で学ぶユダヤ現代史」です。「ブラジルから来た少年」みたいなフィクションっぽいのは除きました。一応、作中で描かれている時代順で並べました。機会があったら文学編もやってみます。
■オフィサー・アンド・スパイ(仏伊、2019年)
反ユダヤ主義「ドレフュス事件」が題材になっています。ポランスキー監督はユダヤ系で、迫害の中、育ちました。
■ライフ・イズ・ビューティフル(伊、1977年)
「一本だけ」に絞るなら、文句なしにこれ。傑作中の傑作。
■ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命(チェコなど、2017年)
大戦中のポーランドで、300人のユダヤ人をナチスから救ったポーランド人夫妻の話です。ポーランドにはユダヤ人が多かったのです。
■サラの鍵(仏、2010年)
1942年にフランスで起きたユダヤ人迫害を伝えます。自国の黒歴史をこうして語り継ぐ国は強いと思います。
■終電車(仏、1981年)
フランス映画って基本「男と女の愛模様」で、本作もそうですが(笑)、主要人物の一人が迫害から逃れるユダヤ人であることが大きな鍵になっています。
■ウォーキング・ウィズ・エネミー ナチスになりすました男(米など、2014年)
ハンガリーでのユダヤ人迫害。多くのハンガリー人がナチスの手先になっていたことがよく分かります。アイヒマンも主要人物の一人として登場します。
■シンドラーのリスト(米、1993年)
スピルバーグが監督したので、ホロコーストものでは最も有名。スピルバーグはユダヤ系ですが、何とかバーグとか何とかバウムは、ユダヤ系であることが多いです(野村真理「ガリツィアのユダヤ人」に理由が書いてある)。
■戦場のピアニスト(ポーランドなど、2002年)
次に有名なホロコースト映画でしょう。
■オデッサ・ファイル(米、1974年)
ヒトラー亡き後のナチスの象徴的人物はアイヒマンだと言えますが、そのアイヒマンは南米の逃亡先でイスラエル工作員に捕まります。どうして彼の居場所が分かったかが、作中でそれとなく示されています。ドキドキするスパイ物です。
■ハンナ・アーレント(独など、2012年)
アイヒマン裁判の傍聴記で一躍世界に知られたドイツ系ユダヤ人政治哲学者アーレントの伝記映画。すんごい硬派。ハリウッドにこれが作れるか? 無理でしょう。
■家へ帰ろう(スペインなど、2017年)
サバイバーのその後の人生を描いたロードムービー。
それにしても、と思うのは「ドイツ人が悪役として描かれる映画の量」です。日本人のそれとは比較になりません(数の多寡はともかく、敗戦国の無限責任は辛いですね。これが両国の国民性にどのような影響を与えているか、誰か国際共同研究してほしいものです)。アメリカが世界の一大映画産地であることを間引いても、やはり世界大戦というのは基本的に欧州が主戦場、太平洋戦争は日米の局地戦だったのだと思わされます(アメリカもよく二正面作戦で勝利したもんですが)。