プッシュとプル

 社会人になりたての人に、言っていることがあります。
 
 「独身の間は生命保険は不要だ」
 
 自分自身の苦い体験を踏まえてのものです。
 
 会社に入って間もないころ、職場に出入りしていた女性からしきりに生命保険を勧められました。言われるがままに印鑑を押しました。
 
 結婚し、子供を授かり、30代になったころ、家計を見直そうと手当たり次第にその手の本を読んだところ「独身の間は生命保険は不要」とありました。
 
 なぜか? すべての保険は「~したら」支払われるものである。大病で入院したら、死亡したら。でも、若いうちに大病になる確率は限りなく低い。病気になっても貯蓄で十分まかなえる。独身者が死んでも困る人は少ないが、大黒柱が不慮の死に見舞われたら残された妻子が大変だから、家族を持ったら生命保険に入ろう--そんな内容でした。
 
 独身のうちからせっせこ保険料を払った、というより第一生命に〝献金〟してきた自分の知識の無さが情けなくなりました。しかも、勧められるがままにガン特約までつけてました。20代でガンになる確率なんてほぼゼロだということは保険会社も重々ご承知だったと思いますけどね。いえ、印鑑を押した私がバカなのです。
 
 毎月約1万円を給与引き落としで支払っていましたが、死亡保障を残してすべて解約しました。年間12万円×10年として120万円。全く払う必要のない、高い授業料でした。
 
 生命保険自体は必要なので、ライフネット生命に加入しました。自分で調べ尽くして納得ずくで、必要な保障にだけ入っているので、後悔はゼロです。強調しておきますが、私はライフネットの回し者ではありません。
 
 ライフネットを創業した出口治明さんには一度だけお目にかかったことがあります。スケールの大きな方でした。過去に全く拘泥しない恬淡さがありました。「今を楽しむ」に徹底する姿勢がありました。
 
 出口さんから直接・間接的に学んだことは多いのですが、その中の一つに「プッシュとプル」があります。出口さんたちがライフネットを創業するまでの経緯を書いた「直球勝負の会社」の中で言及されています。
 
 「プッシュ」は従来型の、〝保険のおばちゃん〟がセールスする保険販売のあり方です。当然ですが、彼女たちの給与は私たちが支払う保険料に上乗せされています。
 
 「プル」はライフネットのような、ネット型の保険販売です。会社からセールスはしない。加入したい人がWebサイトを訪ねて自分で購入する。セールスに必要な人件費や物件費が上乗せされないので、保険料も割安になります。
 
 ヤクルトレディがプッシュ型なら、自動販売機はプル型ですよね。どちらがお好きかは人それぞれです。
 
 クリスチャンになるということは、「死亡後保障」という最強の保険が手に入るということなのですが(しかも保険料は一切なし)、こと日本では、プッシュすればするほど相手から疎ましく思われることが少なくありません。相手の懐に飛び込む才能を与えられた人はともかく、私のような人間は、基本的にプッシュはせずに背後で祈り、関心を持ってくれた人がプルしに来るのを待つのが、消極的ですがベターな気がします。
 
 このWebサイトも、知り合いにはPRしましたが、特段自分からは宣伝してなし、ページビューを増やす努力もしていないんですね。キリスト教に関心を持った人が何かのキーワードで検索してたどりついて、アップされた記事をプルしてもらえれば十分なのです。
 
 いいドリンクをそろえていますよ。イチオシは「命の水」のペットボトルです。栄養価の欄にはこのように書かれています。
 
 「わたしが与える水を飲む者はだれでも、決して渇くことがありません。わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠のいのちへの水がわき出ます」(ヨハネの福音書4章14節)