ハーベスト・タイム・ミニストリーズを運営する中川健一牧師の活動に、「ハーベスト聖書塾」があります。先日、聖書塾を修了したので、感想等をまとめたいと思います。
まず「すべての神学校(バイブルスクール等の名称を含む、広い意味での神学校。個人運営か組織かは問わない)には『それぞれが正しいと信じる神学的立場』があり、すべての神学校はその維持拡大のために存在する」と言い切ってしまいましょう。
聖書塾の神学的立場--特色と言ってもいいのですが--は「ディスペンセーション神学」です。ディスペンセーション神学については、こちらで詳しく説明しましたので、ご参照ください。
管見の限り、ディスペンセーション神学を正式に取り入れている神学校は、日本にはありません。日本メノナイトブレザレン教団の福音聖書神学校が、選択科目で用意しているぐらいでしょうか。
2018年4月、交流のあった聖書塾の卒業生から、「今度岡山で聖書塾の入門講座が開講するので、山崎さんも参加しませんか」と誘われたのがきっかけでした。クリスチャンになって20年余。ここらで一度、体系的に学んでみるのも良いかと思い、参加することにしました。岡山だったら関西からは新幹線であっという間だし、松山の妻子の元に帰る際には必ず通る場所でしたし。
岡山での入門講座には、関西や中国、九州などから約30人が参加しました。貸会議室を使っての対面座学でした。中川師の小説「日本人に贈る聖書ものがたり」をテキストに、月1回×4カ月、聖書全体を大づかみする学びが進められました。レポートの提出もありました。
入門講座を終えた人は、神学講座に進むことができます(入門講座だけでやめることもできる)。神学講座では組織神学を学びます。組織神学とは耳慣れない言葉ですが、「聖書とは」「救済とは」「罪とは」「終末とは」といった、キリスト教を語る上で欠かせない個々のテーマについて体系的に(組織立てて)学ぶものです。
神学講座は通信教育です。聖書塾のサイトからログインすると、ネット経由で1課(テーマ)につき各1時間余の講義が見られるようになります(むろん、受講料を払った人のみ)。放送大学に近いイメージです。1課ごとに400字×5問のレポート執筆があり、サイト経由で提出すると中川師のコメント・採点とともに返却されます。2年間で計48課学びました。
ハーベスト聖書塾の良かったところ、得たもの等を総括すると……
●通信教育なので好きな時間に学べた:スクーリング前提だったら続けられなかったと思います
●授業料が驚異的に安い:中川師の個人運営だし、ネットベースで施設の維持管理費も必要ないので、授業料を抑えられているのだと思います
●徹底した聖書主義。ほぼすべてのテーマが「~について聖書はどのように語っているか」を基本に語られています。哲学や思想、なんたら主義が援用されることはありませんでした
●ディスペンセーション神学に基づいている。ディスペンセーション神学についてきちんと学びたい人には、おそらく唯一の選択肢だと思います
私は聖書塾で学ぶ前からディスペンセーショナリストですし、ハーベストが提供しているオンラインメッセージはすべて聞いていたので、「目が開かれた!」的なところはあまりありませんでしたが、学んだすべてのテーマについて理解や見方が深化し、論理的・聖書的に説明できるようになり、よい学びの時間になった、というのが正直なところです。
レポートは、なるべく堅苦しくならないよう、自分が体験したことなども(けっこう赤裸々に)盛り込んだのですが、「自分の中にどんなエピソードがあるか」「このテーマから何を書けるか」と考えるのは、自分を深く見つめ、自分の「記憶資産の棚卸し」をするうえで良かったと思います。
聖書塾で学位が得られる訳ではないですし、各教団から牧師として正式に認定してもらえる訳でもないですし(「聖書フォーラム」という名の家の教会を始めることはできる)、ヘブライ語やギリシャ語で聖書を読めるようになる訳でもありませんが(牧師になるなら必修)、そこは私塾だからと割り切っています。
聖書神学、歴史神学、実践神学など、学ぶべきことはまだまだあります。これからもさらに学びを続けて、神の栄光をさらに表し、一人でも多くの人にキリスト教を伝えたい、というのが私の願いです。
コロナ禍に伴い、聖書塾も新しいスタイルを模索しているようです。おそらく、入門講座もオンラインベースになるのでしょう。これまで入門講座は地理上の制約がありました(遠方の人ほど参加が困難)が、オンラインなら門戸が広がるので、それはそれで良いと思います。
新しい聖書塾が始まり、それに一人でも多くの人が参加されることを願います。
追記:オンラインスタイルの聖書塾がスタートしたようです。
追記2:卒業された方で、さらに学びを深めたい人向けに、いくつか推薦図書を挙げておきます。
●アリスター・E・マクグラス「キリスト教思想史入門 歴史神学概説」
●ティモシー・ウェア「正教会入門 東方キリスト教の歴史・信仰・礼拝」
●青木保憲「アメリカ福音派の歴史―聖書信仰にみるアメリカ人のアイデンティティ」
●井上政己監訳「キリスト教2000年史」
●ルイス・ベルコフ「キリスト教教理史」
●ティム・ダウリー「地図で見るキリスト教の歴史」
●角田佑一「教義と歴史から理解する 入門・世界の宗教」
●マイケル・コリンズ総監修「ビジュアル大百科 聖書の世界」